SM小説 鞭化粧

泣きむせぶ女たちの夢つづり。本格SM小説集。

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これだ。

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隷妻倶楽部(一話) 

シーン1 セラピスト

一話


私は家の外で旧姓を名乗っています。
 真木久仁子、二十九歳。
 結婚から三年ほどがすぎますが、仕事は辞めずに続けてきている。
それもあって周囲はそっちのほうが呼びやすいのでしょうし、いまは
むしろ旧姓の私のままでいたいと思うようになっている。

 そちらのほうが私らしくいられるから。
 主人との暮らしは平坦なハピネス。穏やかな妻たちのアベレージ。
 でも、彼との暮らしの外側にほんとの私がいると思っている。

 破綻、破滅、崩壊…崩れていく私。

 日常の中でふと出会うそんな言葉にキュンと胸が苦しくなる。熱波
も寒波もなく適度なミニスカートで快適にすごせてきたような女の人
生に、生きている実感が持てなくなりつつあるんです。
 何かあった? いいえ、何もないから無性に何かを求めている。

 耽美、耽溺、発狂…そんなことの書かれてある書物。
 
 アルゴラグニア=苦痛性愛。ちょっと怖いキーワードに震えてしま
う自分がいる。もちろんそんなものは妄想ですよ。思い描いているだ
けなんですが、暴走しだす欲望を感じます。
 私は誰でどこへ向かうの? 真木久仁子で女に向かうでは回答に
ならないし、まして佐伯久仁子で妻に向かうでは悶々としてしまう。
 佐伯は妻としての私の姿。

 このときまでの私はまだ隷妻倶楽部を知りません。

「イメージセラピー? 何なの、それ?」
「性格診断というのかテストというのか。私もよくは知らないんですけ
ど、ネットで囁かれだしてるの。その人、主宰って呼ばれてるらしい
のよ」
「主宰…何を主宰してるの?」
「それもよくわからない。不思議なセラピーで深層心理をあぶり出し
てくれるらしいよ。ほら、自分が何者でどこへ行くのかなんて普通の
人は考えたこともないでしょう。あなたはこうだと自分像を見せてくれ
るって評判なのよ」

 考えていたことをそのまま言われます。

 学生時代からの友だち、西村ルミとお茶していました。卒業では
同期ですけど彼女は遊びすぎて一年ダブっていましたから、ひとつ
上の三十ジャスト。小柄で綺麗な女性です。
 私より一年遅れて結婚したわ。私同様、妻しながら働いているの
ですが感覚はあの頃のまま。老成しないし発展家。噂ですけど、す
でに不倫してるよう。男出入りの激しかった子ですからね。

 久びさ会って、お喋りしてストレス解消といったところなんですが、
お酒の席で女が二人だと話題はどうしてもエッチに向かってしまい
ます。
 正直、ルミは、あまり得意なタイプじゃありません。仲はいいのよ。
仲はいいのですが二人で会うと微妙に無理する私がいる。派手だし
突飛なことを平気で言ったりしたりする。面喰らうと言うのでしょうか、
ちょっとついて行けないムードを感じます。

 私はカタイ? そんなつもりもないのですが、私ってじつは臆病な
女なんですね。
 イメージセラピー…たぶんサイコセラピーのようなものでしょうけど、
自分が何者かを突きつけてくれそうで面白かった。

 見つけたわ。ネット。イメージセラピーそれに主宰と検索ワードを
重ねてみてヒットしたのは、ある女性のホームページ。
 なにげにクリックして、わけのわからない震えがきた。
 マゾ女性のサイト。調教画像や動画もアップされたSMサイトだった
から。
 その中に回想のようなエッセイがあったのですが、読んでいるうち、
ゾクゾクしてきて鳥肌が立ってきた。


  ~迷路~

  迷路を歩くような人生の中で出会ったお方。
  求めていたお方。
  もっとも、何を求めていたのかなんて、そのときまでの
  私にはわからない。イメージセラピーが私の正体を
  あぶり出してくれたようで、それから私は安堵して、
  主宰の言うがままに身を委ねた。

  主宰は、ある倶楽部をまとめておいで。
  ここでは書きませんが、耽美、耽溺、
  それでもなければ、悲鳴、涙、あくなき絶頂。
  狂気の道筋が示されて、その刹那、
  苦しみもがいた迷路が消えてしまっている。

  性奴隷という女の生き方へ踏み出していたんです。


 迷いはなかった。
 耽美、耽溺、悲鳴、涙…感じる言葉や震えるキーワードが私を衝
き動かしていましたね。

 彼女とメールでお話し、主宰という男性を紹介していただきました。
 セラピーからすべてがはじまる。おまえはこんな女だと保護膜を剥
がされてしまうことは、女にとってこれほどの恐怖はありません。
 ガードの内側の自分に気づかない女はいないでしょう。剥がされ
てしまえば本音が剥き出し。

 十日後の約束の日が秒針の動きとともに残酷なほど迫ってきます。
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