SM小説 鞭化粧

泣きむせぶ女たちの夢つづり。本格SM小説集。

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これだ。

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TOP~隷妻倶楽部 




貞淑な妻たちを完全なる性的二重人格を得た
貴婦人へと化身させてゆく隷妻倶楽部。
中~短編を織りまぜたオムニバス形式で連載します。

一話  二話



ストーリーを見直してイチから書きなおしています。



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隷妻倶楽部 

シーン1 セラピスト

二話


 久仁子が自宅マンションを出たのは金曜日の朝だった。夫を送り
出し、シャワーをすませて身支度を整えた。土日に有給を一日足し
て三日の休み。セラピーは二十四時間続くという。

 渋谷ターミナルの私鉄から都心を突き抜けて隅田川を渡る。この
へんまで来れば千葉なのだが、都会の景色に切れ目はなく東京に
いるのと変わらなかった。
 怖がっていたのは昨日までで朝になると恐怖は消えた。怖さよりも
緊張する。イメージセラピーというものを知ったのがマゾ女性のホー
ムページ。つまり性的なニュアンスのあるセラピーであることは想像
できた。

 久仁子は難しいことを考えていたわけではなかった。それなりに
恵まれた家庭環境に育ち、まったく普通に生きてきて、しかしだか
ら、平坦すぎる日々に不安がよぎる。
 生命を燃やして生きている実感がない。得体の知れない空虚に
支配される自分を感じる。
 私のアイデンティって、いったい何? 人並みに結婚もできていて、
このままだと生涯穏やかに生きていく。ごくノーマルな女たちが、お
そらく考えてみようともしないことに固執して、自分勝手な妄想を描
いているだけなのか?

 セラピーは二十四時間。一日分の人生がなかったと思うだけで私
の正体が浮かび上がるならいい。思うことはそれだけだった。

 JRの駅を出て、駅前に列をなしたタクシーに乗り、はじめての街を
ぼーっと見つめながら、わずか数分。いまはもう名さえない古刹の
前でクルマは停まった。大正の頃からある古い寺。住職が亡くなっ
て継ぐ者の絶えた寺を、主宰と呼ばれる男が手にした。住職の家系
なのだと聞かされているだけだった。

 寺は寺の外見を保っていたし、格子の引き戸を開けて庫裏へと入
っても、造作に淫靡なムードはまるでなかった。
 二十代前半の若い女が出迎えた。ジーパンにTシャツを合わせた
だけのあたりまえの娘。化粧っけもなく、長い黒髪をサラサラ流す。
 一見して家族だとは思えない。お手伝いさんか何かだろうと考えた。

「真木さんでいらっしゃいますね?」
「はい、真木久仁子です、こちらにあの…」
 緊張しすぎて声が震える。娘がにこやかに微笑んだ。
「はい、お待ちかねですよ、こちらへどうぞ」

 玄関先は寺だった頃の造りのまま。スノコがあって履物を置く棚が
ある。久仁子は黒のローヒールを脱いで棚に置くと、上がり框に並べ
られたスリッパを履き込んだ。
 娘に連れられて黒くテカる廊下を行くと、ものの数歩でがらんとし
た板の間に広間。そこは本堂だった場所。いまはもう寺ではないか
ら本尊などももちろんなくて、本尊があったと思われる一段高い台
座の上に灰色の毛氈が敷かれてあって、いまどきめずらしいオーデ
ィオセット、それに液晶テレビが置かれてあった。

 それ以外に何もないがらんとした古い広間の真ん中に、大きな座
卓と座布団が二枚。それとは別に部屋の隅に座布団が二十枚ほど
も重ねられてあっただけ。さながら旅館の広間のようだ。
 性を意識させるような妖しいものは何ひとつない。部屋の三方に
それもまたいまどき木枠の窓があって明るい。初夏の陽光が眩しい
ほどに射し込んでいる。

 廊下に板鳴りがして、先ほどの娘が焦げ茶のサロンエプロンをし
て現れた。丸い盆にオレンジジュースを載せている。長かった黒髪
をポニーテールにまとめていたから、もしや通いの家政婦が来たば
かりだったのかと想像した。
 座卓の下座側に正座をした久仁子の前にジュースを置いて離れ
ようとしたときに、まったく不意に背の高い男が顔を出す。
 百八十センチまではなかっただろうが、それでもすらりと背が高く、
髪は男性のショートスタイル。生成りのコットンパンツにグレーのポロ
シャツ。四十代のはじめぐらいの、まだ若い男性だった。

 娘とすれ違いざまに男は「支度しなさい」と言いつけた。そのときの
返事を聞いて久仁子はゾクとした寒気を覚えた。
「はい、ご主人様」
 艶のある微笑みで男に眸を流す娘の面色がマゾ女のそれに思え
てならない。
 ご主人様と呼ばれた主宰は、座卓の上座の側に古い板床を少しも
鳴らさず、あぐらをかいて座り込んだ。

「少し驚かれたようですね。いまのはユリと言って我々の倶楽部のペ
ットのような子なんです」
「ペットですか…」
「私のことは皆が主宰と呼びますのでそう言っていただければよろし
いでしょう。隷妻倶楽部と言いましてね。奴隷の隷に妻と書く。私は
その主宰というわけです」
「そ、それはその…SMとかそういった…?」
「隠してもしょうがない、おっしゃる通りです。意味は追っておわかり
になると思うが、いまはよろしい。チャミちゃんにメールをされたそう
ですね?」

 チャミ。奴隷としての彼女の名がそうだったと久仁子は思った。
「あ、はい。それでご無理を申し上げて」
「うむ。紹介がなければ入れませんので、それでよかったんですよ。
私はもともと整体師だったんです」
「え? 整体師って?」
「マッサージだと思えばいい。ここは以前私の親族がいたんですが、
もうろくしてしまいましてね。受け継いだわけですが、そのときから倶
楽部をはじめたということです。マッサージといってもいかがわしい
ものではない。お客さんには女性も多くいらっしゃり、さまざまお聞き
するうちに影響されることもありましてね。まあ、いきなり説明しても面
喰らうだけでしょうからいまは言いませんが」

「ではセラピーというのはマッサージなんですか?」
 主宰は微笑んで首をすくめる仕草をする。
「いえいえ、こう見えても大学では心理学部で心理療法士を目指し
てましてね。深層心理に踏み込んでいかないと女の人はわからない
わけですが、私がわかってもしょうがない。自分を知ること。すべて
はそこからです。あなただって、そのためにお見えのはずだ」

「では、さっそく。こちらへ」
 柔和に微笑まれ、立ち上がった久仁子の背を主宰はそっと押しや
った。このとき久仁子は、オフィスで着る紺地スカートスーツのミニス
カート。上は白いブラウスだった。小ぶりのショルダーバッグを手に持
った。やや浅く茶色に染めた長い髪を梳き流している。
 薄く白いブラウスが淡いピンクのブラを素通しにし、タイトシルエッ
トのスカートのインベルに潜り込んで、ウエストのくびれを際立たせて
いる。

 久仁子は百六十三センチ、Cカップのプロポーション。ファッション
を下手に崩して私服を選び、不埒な女に見られたくないという思い
が選ばせたスタイルだったのかもしれない。

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隷妻倶楽部(一話) 

シーン1 セラピスト

一話


私は家の外で旧姓を名乗っています。
 真木久仁子、二十九歳。
 結婚から三年ほどがすぎますが、仕事は辞めずに続けてきている。
それもあって周囲はそっちのほうが呼びやすいのでしょうし、いまは
むしろ旧姓の私のままでいたいと思うようになっている。

 そちらのほうが私らしくいられるから。
 主人との暮らしは平坦なハピネス。穏やかな妻たちのアベレージ。
 でも、彼との暮らしの外側にほんとの私がいると思っている。

 破綻、破滅、崩壊…崩れていく私。

 日常の中でふと出会うそんな言葉にキュンと胸が苦しくなる。熱波
も寒波もなく適度なミニスカートで快適にすごせてきたような女の人
生に、生きている実感が持てなくなりつつあるんです。
 何かあった? いいえ、何もないから無性に何かを求めている。

 耽美、耽溺、発狂…そんなことの書かれてある書物。
 
 アルゴラグニア=苦痛性愛。ちょっと怖いキーワードに震えてしま
う自分がいる。もちろんそんなものは妄想ですよ。思い描いているだ
けなんですが、暴走しだす欲望を感じます。
 私は誰でどこへ向かうの? 真木久仁子で女に向かうでは回答に
ならないし、まして佐伯久仁子で妻に向かうでは悶々としてしまう。
 佐伯は妻としての私の姿。

 このときまでの私はまだ隷妻倶楽部を知りません。

「イメージセラピー? 何なの、それ?」
「性格診断というのかテストというのか。私もよくは知らないんですけ
ど、ネットで囁かれだしてるの。その人、主宰って呼ばれてるらしい
のよ」
「主宰…何を主宰してるの?」
「それもよくわからない。不思議なセラピーで深層心理をあぶり出し
てくれるらしいよ。ほら、自分が何者でどこへ行くのかなんて普通の
人は考えたこともないでしょう。あなたはこうだと自分像を見せてくれ
るって評判なのよ」

 考えていたことをそのまま言われます。

 学生時代からの友だち、西村ルミとお茶していました。卒業では
同期ですけど彼女は遊びすぎて一年ダブっていましたから、ひとつ
上の三十ジャスト。小柄で綺麗な女性です。
 私より一年遅れて結婚したわ。私同様、妻しながら働いているの
ですが感覚はあの頃のまま。老成しないし発展家。噂ですけど、す
でに不倫してるよう。男出入りの激しかった子ですからね。

 久びさ会って、お喋りしてストレス解消といったところなんですが、
お酒の席で女が二人だと話題はどうしてもエッチに向かってしまい
ます。
 正直、ルミは、あまり得意なタイプじゃありません。仲はいいのよ。
仲はいいのですが二人で会うと微妙に無理する私がいる。派手だし
突飛なことを平気で言ったりしたりする。面喰らうと言うのでしょうか、
ちょっとついて行けないムードを感じます。

 私はカタイ? そんなつもりもないのですが、私ってじつは臆病な
女なんですね。
 イメージセラピー…たぶんサイコセラピーのようなものでしょうけど、
自分が何者かを突きつけてくれそうで面白かった。

 見つけたわ。ネット。イメージセラピーそれに主宰と検索ワードを
重ねてみてヒットしたのは、ある女性のホームページ。
 なにげにクリックして、わけのわからない震えがきた。
 マゾ女性のサイト。調教画像や動画もアップされたSMサイトだった
から。
 その中に回想のようなエッセイがあったのですが、読んでいるうち、
ゾクゾクしてきて鳥肌が立ってきた。


  ~迷路~

  迷路を歩くような人生の中で出会ったお方。
  求めていたお方。
  もっとも、何を求めていたのかなんて、そのときまでの
  私にはわからない。イメージセラピーが私の正体を
  あぶり出してくれたようで、それから私は安堵して、
  主宰の言うがままに身を委ねた。

  主宰は、ある倶楽部をまとめておいで。
  ここでは書きませんが、耽美、耽溺、
  それでもなければ、悲鳴、涙、あくなき絶頂。
  狂気の道筋が示されて、その刹那、
  苦しみもがいた迷路が消えてしまっている。

  性奴隷という女の生き方へ踏み出していたんです。


 迷いはなかった。
 耽美、耽溺、悲鳴、涙…感じる言葉や震えるキーワードが私を衝
き動かしていましたね。

 彼女とメールでお話し、主宰という男性を紹介していただきました。
 セラピーからすべてがはじまる。おまえはこんな女だと保護膜を剥
がされてしまうことは、女にとってこれほどの恐怖はありません。
 ガードの内側の自分に気づかない女はいないでしょう。剥がされ
てしまえば本音が剥き出し。

 十日後の約束の日が秒針の動きとともに残酷なほど迫ってきます。

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ギボン家を継ぐ女(終話) 

終話 服従の愛


夜になって嵐となった。吹きなぐる雨が窓を叩き、屋敷に女2
人では怖いほどの嵐である。
食事のすぐ後、円卓のそばで嵐のような性の夜がはじまった。
目隠しをされた奴隷が仰向けに寝そべって、下着をつけない
2人の女が顔にまたがり・・・ドレスのフレアを開いて腰を降ろし
ていくのである。
「お尻の穴を舐めて、それが誰か当ててごらん。私たちの不潔
な匂いは覚えているわね。2人ともお風呂がまだですから、い
い香りがすると思うわ・・・ふふふ」
「まさかとは思うけど外したら・・・くくくっ」
両手を上に上げさせて伸びた体にまたがっていく。そこが触れ
るか触れないか・・・奴隷は懸命に舌を伸ばして求めていく。
最初はアリシア、次にイライザ、奴隷はもちろん手などは使っ
てはいけなかった。
「さあ、ボーイ、言ってごらん」
「はい、最初はお嬢様、それから奥様です」
2人は眉を上げて微笑み合って、さらに言う。
「じゃあ次はアソコよ。舐めないで触れるだけのキスをする」
「はい」
やはり最初はアリシアだった。
「ふふふ・・・さて?」
「はい、お嬢様そして奥様です」
「わかるのね・・・」
「ほんと・・・くくく・・・嬉しいわ」
それからさらにイライザが言った。
「ご褒美のおしっこですけど、それも当ててごらんなさい」

2人ともドレスを脱ぐだけで全裸であった。今度はどこにも触れ
ないように、大きく開けた口のそばまで腰を降ろす。
タラタラと垂れるものを喉を鳴らして飲み込んで、ボーイの口許
が微笑んだ。
「奥様そしてお嬢様です。奥様のはアルコールの香りが少し」
「あ・・・そうか」
食前酒のワインだった。
「うふふ・・・それにしても凄いわ、なんて可愛い奴隷でしょう。カ
チンカチンに勃起させて、たまらないって様子よね・・・くくくっ」
「そうね・・・でも今夜はよくできたご褒美も・・・鞭かしら」
「うんうん・・・くくく・・・おいで・・・」
目隠しをされたまま、2人の素足の足跡を頼りに床を這い、そ
れがなぜか、浴室へと向かっていく・・・鞭ではないと奴隷は思
った。
浴室は石板の床である。そこで奴隷は尻を上げて四つん這い。
目隠しを外されて、前にアリシア、後ろにイライザ・・・イライザの
手で冷たく細い何かが尻の底へと突き刺された・・・浣腸だった。
「ああっ・・・そんな・・・ああ・・・」
「ふふふ・・・男爵家のご子息ですもの・・・まさか我慢できなくて
出したりはしないでしょうね・・・末代までの恥よ・・・ふふふ」
「ぅぷっ・・・あはははっ! オムツする? あはははっ!」
楽しそうに母子は笑った。寂しくて寂しくて、再会を心待ちにし
た2人の思いに、奴隷は静かに涙を溜めていた。

尻を振って苦悶した。限界だった。
「ああもう・・・もうぅ・・・」
「出ちゃう? おほほほっ!」
「男の人のそういう姿、見てみたいな・・・きゃはははっ!」
「ぁう・・・く・・・ぅくくっ・・・もう・・・もうぅ! ありがとうございます、
嬉しいです、奥様、お嬢様ぁ・・・惨めな姿をご覧になってくだ
さいませ・・・ああーっ!」
イライザもアリシアも心が熱い。グラントの愛に、男がどうした身
分どうしたと、くだらないプライドなど入り込む隙間もなかった。
恥辱にまみれ、ただ2人の笑顔のために生きている・・・そして
それをこの上ない悦びとして、グラント自身も満たされる。

「ぁううぅ・・・あぅぅぅ!」
「泣きなさい、好きなだけ泣きなさい。あなたはね、私たち2人と
この家を支えるために、いま苦しんでいるのです。立派な人に
なってちょうだい」
「そうよ・・・私たち寂しくて寂しくて、どれほど泣いたか・・・ああ
グラント、愛しているのよ」
「汚いモノを撒き散らして・・・最低な男よね」
「まったくだわ、犬猫以下の変態男」
「はい・・・はいぃ! ぁぅぅぅぅ・・・ありがとうございますぅ! 頑張り
ますからぁ」
四つん這いで泣き崩れるグラントの顔を、イライザは乳房に抱
いた。

「あなたはわかっているはずよ・・・そうでしょう・・・いい子だもん
ね・・・」
諭すように言う母親の横顔を、アリシアは探る視線で見つめて
いた。
「あなたは想いの深い子です、私たちのどちらもが、じつは支
配されたい側だと気づいているはず・・・それにあなたの本質
はサディストです。だから早く大きくなって、騎士ギボンにも劣ら
ない男となって戻ってちょうだい。ご主人様とお呼びして私たち
が平伏せるような人になって。それまで私たちは、あなたを奴
隷として躾ていくわ・・・躾て躾て、命をかけて支えてあげる。あ
あグラント、可愛いわ・・・愛してるのよ、あなたを・・・」

「お母様、どいて。臭い奴隷をシャワーで流して・・・それから、
それから・・・抱いてほしいの・・・」

 
「・・・というわけで、敵の夜襲を防ぐにはどうしたらよいか。深夜
となって灯台を消すのは当然だが、それまでに忍ばれてしま
い後手に回ることが多いのだ。基地には我が軍の艦船が停泊
している。敵は闇の海だ。艦砲射撃の射程ギリギリに潜んでい
る。さてどうするか? 誰かおるか?」
「それでしたら・・・」
グラントが最初に声を上げた。
「うむ、言ってみろ」
「はい。それでしたら灯台船をつくればいいのでは?」
「灯台船だと? 灯台を船に据えるというのか?」
「そうです。要するに灯台と同じ高さ同じ明るさの光源であれば
いいのです。灯台を消したとしても全域が闇では、目が慣れて
月明かりで地形が目立つ。深夜、基地にある本物の灯台の前
に灯台船を浮かべておいて、本物の灯台を消すと同時に船の
灯台を点灯するのです。そして敵に移動しているとは気づかれ
ない低速で、沖へと船をゆっくり動かす。数百メートルで充分で
しょう。敵は近くにある偽の灯台を基準に射程を計算しますか
ら、したがって、発砲されても基地までは届きません。さらに、
船に設置する灯台は折り畳みとしておけば、日中見破られるこ
ともない。それに・・・そうだ、それと同じ考え方で、移動灯台
で敵船を誘導できれば、海域によっては浅瀬で座礁させること
もできるでしょう」
「ふふふ・・・なるほど二重灯台というわけか・・・子供じみた考え
だが・・・ふっふっふ・・・面白い、じつにユニークな発想だ。
うむ? 君は確かアーサー少将の・・・?」
「はい、グラントと申します」
「君かね・・・海賊警備隊の発案者は・・・ふふふ、なるほどね、
ふっふっふっ!」

イライザとアリシアが、やがて英国海軍きっての作戦参謀とな
る、グラント大佐を育てていた。
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ギボン家を継ぐ女(十二話) 

十二話 日々の欠落


「怖いと思うわよ。男爵家の養子であって、国中から才能ある
若者の集まる学校へいきなりですからね。私があれほど嫌う上
流世界への登竜門に押しやってしまったのですから」

グラントのいない屋敷は、主語の消えた愛のようなものだった。
グラントは、まず先にアーサー准将の養子となって、海軍士官
学校へ、その准将の口利きで入れられていたのである。
この頃の英国海軍士官はまさにエリートの集まりであり、爵位を
持つ家柄の子息も多くいた。その中にいきなり18歳の平民の
子が放り込まれたわけである。試練とはいえ、グラントには地獄
の日々だと想像できた。上の世界のいやらしさ・・・妬み、ひが
み、目下への侮蔑と、どろどろしたもののすべては、常日頃イラ
イザを悩ませるものだっだ。

アリシアは寂しい。男性との関わりを知ったばかりで引き裂かれ
てしまった。母親の前で笑っていても独りになると表情は冷え
ていた。この家の当主としてギボン家を支えてゆくための試練
である。しかしアリシアは悔やんでいた。引き留めておけばよか
った。名もない男のままでもよかったのにと・・・。

海軍の馬車が寄り、アーサーが訪ねてきた。グラントがいなくな
って三月ほどした頃だった。アーサーは円卓の席に着くなり、
まずグラントの近況を話し出す。そのために多忙の合間をぬっ
て訪ねてきたのだ。テーブルにはイライザとアリシアが揃ってい
た。
「教官が言っておったよ、じつにユニークな発想をすると。知
識は決定的に足りないが、その資質はピカイチだとね。本人も
死に物狂いでやっている。騎士ギボンの足許に早く自分も達し
たいと意欲を見せておるそうだ」
母子は顔を見合わせて少し笑った。
「で・・・そうそう、海賊警備隊だがね」
「ええ? その後どうなっておりますの?」
アーサーは眉を上げて微笑んだ。
 
「どうもこうも、グラントのおかげだよ、海峡が嘘のように静かに
なった。海賊どもが消えたわけではないが、よその海へでも行
ったのだろう。商売敵程度に思って近づくと、我が軍が誇る近
代兵器の攻撃を受けるのだ。木造船などひとたまりもないから
ね。しかもだよ」
「何ですの?」
「素性の知れない輩であるにもかかわらず、引き入れてみると
じつによく働いてくれるのだよ。グラントも言っておったが、これ
からは平民の時代となるのやもしれないな。家柄や面子やと、
くだらないことにはかまっておれない。本当にそう思う。で私も、
その海賊警備隊の登用を認められて少将に昇格したさ」
「まあ、それはおめでとうございます」
「いやいや・・・やらされておるというのが実状でな・・・ま、それも
グラントの手柄だよ。さて最後に、そのグラントだが・・・」
「はい? 何か?」
「そろそろ三月となるが・・・じつは・・・ふふふ」
アーサーはにやりと笑ってアリシアに横目をなげた。
「何ですの、おじさま? 何だか意地悪な感じがしますが」
「うむ? はっはっはっ! じつは学校の事情がちょっとあって
な、学部の移転なのだが、来月にはここから馬車で2時間ほど
の海辺の街に移るのだ。そうなれば月に一度は戻れるだろう。
実戦部門と作戦部門を分けようということになってな。作戦部
門を私のいる海軍司令部の側に置き、模擬で学ぶのではなく、
学生のうちから実際の作戦に触れさせようということだ」

来月・・・三週間ほど先のことだった。アリシアに笑顔が咲いた。

その日は生憎の雨だった。夜半から降りはじめ、朝になってま
すます雨足が強くなる。アーサーが訪ねてきた一月以上後だ
った。
昼下がりの時刻となり、前庭に馬のいななく声がする。イライザ
もアリシアも、それぞれが自室にいて窓辺に駆け寄った。海軍
の四頭だての馬車である。
士官学校の白い軍服を着て帽子をかぶる、キリリとした青年が
降り立った。
イライザもアリシアも、玄関口へと駆け寄った。

「ただいま戻りました、お母様、お嬢様・・・」
「グラント・・・あなた立派になられて・・・お帰りなさい、お疲れさ
ま・・・」
「・・・別人みたい・・・素敵よグラント・・・」
三者それぞれ涙を浮かべて見つめ合う。イライザにすれば息
子が戻ったようなもの。嬉しくてたまらない。
両手を引かれてグラントは屋敷の中へと引き込まれた。今夜と
そして明日の晩、二晩過ごせるとグラントは言う。
イライザが言った。
「今夜は腕をふるってご馳走ですけど、あなた、お皿はいるか
しら?
「いいえ奥様」
「わかったわ・・・ふふふ・・・」
「くくくっ・・・」
どれほどのストレスを抱えているのだろうと2人は思い、それを
すべて消し去って送り出してやりたかった。

食前酒のワインを含み、円卓の下の全裸の奴隷に口づけをし
て含ませるイライザ。
酒の飲めないアリシアはジュースを含み、口づけで与えてやる。
嬉しくて嬉しくて、グラントはぽろぽろ涙をこぼしていた。
しばらく見ない間に、すでにもう勃起するモノが生え揃った陰
毛の中から勃っていた。
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